整形外科症例

記載している手術の写真は、すべて当院の獣医師が実施した手術であり、他から引用・転載したものは一切ありません。

 

前十字靭帯断裂

前十字靭帯は後肢の内旋を制限する靭帯で、動物が足をしっかり地面につけた状態で急に方向転換する(例;体をねじる)と前十字靭帯は断裂します。断裂することで、肢を地面に着ける度に、大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)が接触し、痛みが生じます。また、それにより関節炎が生じることもあります。
治療法は体重が軽く、痛みの少ない動物では手術をせずに保存療法(痛み止めのお薬の内服、運動制限、減量)を選択しますが、大型犬や保存療法を行っても痛みが取れない動物では外科的治療が必要です。
外科的治療法として、丈夫な糸を用いて断裂した前十字靭帯の機能を代用する方法としてラテラルスーチャー法やタイトロープ法、骨切りをして足にかかる負担を軽減するTPLO法などを選択します。

ラテラルスーチャー

TPLO
      

     

 

前十字靭帯断裂+膝蓋骨内方脱臼

先天的異常である膝蓋骨内方脱臼(小型犬に多く認められます)によって前十字靭帯に負担がかかることで、中年齢(6~8歳)以降に前十字靭帯断裂を引き起こすことがあります。その場合、膝蓋骨内方脱臼と前十字靭帯断裂の手術が必要となりますが、従来の術式(ラテラルスーチャー)では両者の術式を一度に実施することは困難でした。
そのため、当院では両者の術式を一度に実施できるModifed TPLOを選択します。
術前  術後  黄色〇;膝蓋骨、赤線;正中線
術前は膝蓋骨(黄色〇)が正中線(赤線)より右側(内側)にずれていますが、脛骨を外側にずらすことで、術後、膝蓋骨が正中線上に矯正されています。

 

橈尺骨骨折

小型犬は骨が細いので、少し高いところから飛び降りただけでも起こります。特に、トイ・プードルに多く認められます。
治療法として、簡易的な髄内ピン法がありますが、この術式は術後に厳重な運動制限を行わないと癒合不全を引き起こすリスクが非常に高くなるため、当院では手術直後でもある程度の生活ができるようにするため、高い強度を得られるプレート固定法を選択しています。


 

イタリアン・グレーハウンド、10ヵ月齢

トイ・プードル、6ヵ月齢

トイ・プードル、1歳齢
 

 

上腕骨骨折

交通事故、高いところからの落下によって生じます。
ピン固定法、ラグスクリュー法、テンションバンド・ワイヤー法を用いて治療します。

W・コーギー(上腕骨Y字骨折)

シー・ズー、6ヵ月齢(上腕骨Y字骨折)
  

 

尺骨骨折

交通事故によって生じます。
ピンとワイヤーを用いたテンションバンドワイヤー法にて治療します。

 

肩甲骨頚部骨折

交通事故やマンションからの落下によって生じます。
ピンやプレートを用いて固定します。

 

中手骨骨折

高いところからの落下、飼い主さんに踏まれるなどの事故で生じます。
外固定で治療することもありますが、多くのケースで随内ピン法による外科的治療が必要となります。

 

骨盤骨折・仙腸関節脱臼

原因は主に交通事故です。
骨盤骨折により起立困難、排便困難などが生じる場合はプレートやスクリューを用いた固定が必要です。

M・ダックスフンド、13歳齢



M.ピンシャー

 

大腿骨骨折

原因は主に交通事故です。
治療法はプレート法、プレート・ロッド法、ピンニングなどを選択します。

柴犬、8歳齢、大腿骨粉砕骨折

猫、4ヵ月齢、1.45kg、大腿骨頚部骨折

猫、6ヵ月齢、2.8kg、大腿骨頚部骨折

犬;M.ダックスフンド、大腿骨遠位関節内骨折(Salter-HarrisⅣ型)

猫、大腿骨遠位関節内骨折
   

猫、大腿骨遠位部骨折

ポメラニアン、癒合不全

 

脛骨骨折

交通事故で生じます。
特に猫が多く、他の骨に比べ粉砕骨折や複雑骨折が多く認められます。
治療には外科的治療が必要で、創外固定法や随内ピンとプレート固定を併用したプレート・ロッド法を用います。

 

 

 

  

 

踵骨骨折

踵骨骨折は交通事故で認められます。
踵骨にはアキレス腱が付着しているため、そのままにしておくと骨折した踵骨が膝の方に引っ張られるため、外科手術が必要です。
主にテンションバンドワイヤーを使用します。

 

中足骨骨折

中足骨骨折は交通事故やベランダから落下した猫で多く認められます。
1本だけ骨折している場合はケージレストで安静にすることで自然と治癒しますが、2~3本以上の骨折の場合は外科手術が必要です。
主に髄内ピンを使用します。

 

肩関節脱臼

原因は主に外傷です。小型犬、特にトイ・プードルに好発します。
上腕二頭筋腱転移術、スーチャー法などの外科的治療を行います。

トイ・プードル

猫(上腕二頭筋腱転移術、スーチャー法)

 

肘関節脱臼

高いところからの落下によって生じます。
麻酔下にて整復し、数週間の安静が必要です。
ただし、再発する場合はピンを用いた創外固定や人工靱帯を用いたアンカー法などの外科的治療が必要です。


猫;マンションからの落下、創外固定にて治療

 

手根関節脱臼

交通事故や落下などで生じます。
手根関節の場所によって、汎関節固定、部分関節固定を実施します。

橈骨手根関節脱臼(汎手根関節固定)

橈骨と手根骨の軟骨面をラウンドバーで除去します。

患者さんの上腕骨から海綿骨を採取し、関節面に移植します。

プレートにて関節を固定します。

 

股関節脱臼

交通事故や飼い主さんに踏まれることで生じます。
損傷後4~5日以内であれば、手術することなく整復することが期待できます。ただし、受傷後数日経過している場合や、整復しても再脱臼する場合は手術が必要です。術式はスローカム・スリング法、関節包再建術、トグルピン固定、大腿骨頭切除などがあります。

トグルピン+関節包再建術

犬、両側股関節脱臼

スローカム・スリング法

猫、生後約3ヵ月齢

大腿骨骨折の整復後、スローカム・スリング法にて股関節脱臼を整復

トグルピン+スローカム・スリング法

 

膝蓋骨内方脱臼

膝蓋骨内方脱臼は、トイ種・ミニチュア種で頻繁に認められます。重篤化すると、遠位大腿骨・近位脛骨の内側への湾曲などが生じます。
内方脱臼のグレードの低い若齢動物では早期のリハビリで改善することがありますが、グレードの高い動物では外科的治療が必要となり、滑車溝形成術、脛骨粗面転移術、ポジショニング・スクリュー設置、Rudy法、前部縫工筋リリース、内側支帯リリースを実施します。

GradeⅢ

GradeⅣ(重度、大腿骨矯正骨切り術を併用)
 

 

足根関節脱臼(距骨踵骨脱臼)

原因は交通事故、外傷です。
外科手術が必要で、プレートや創外固定を用いた関節固定が必要です。

創外固定による関節固定