脳神経外科

記載している手術の写真は、すべて当院の獣医師が実施した手術であり、他から引用・転載したものは一切ありません。

 

椎間板ヘルニア

◎椎間板ヘルニアとは

椎間板とは、脊椎(背骨)を構成しているものの1つで、クッションのような役割りをもっています。
椎間板ヘルニアは、この椎間板の内容物が外に飛び出したり変形することで脊髄を圧迫し、脊椎の痛みや足の運動障害を引き起こす病気です。
症状として「突然、立てなくなる」、「足を引きずる」などが認められます。
好発犬種はM.ダックスフント、W.コーギー、ビーグルなどです。

 

◎治療方法

まずは3~5日間の内科療法を行い、治療の反応や病気の進行の有無を観察します。
症状の改善がある場合は内科療法の継続とケージレスト(犬舎の中で安静にしておくこと)を選択しますが、症状の改善が認められない場合は外科的手術が必要です。

 

◎外科的手術(胸腰部)

手術の目的は、脊髄を圧迫している椎間板突出物質を除去することです。これを行うためには脊椎にドリルで穴を開けなければなりません。

胸腰椎の椎間板ヘルニアの場合、一般的にヘミラミネクトミー(片側椎弓切除術)が選択されます。この術式は脊椎を削る範囲が広く、さらに隣りの脊椎との連結部分(関節突起)を除去するので、術後に脊椎の不安定化が生じる可能性があります。  当院ではミニ・ヘミラミネクトミー(小範囲片側椎弓切除術)を選択します。これは先ほどのヘミラミネクトミー(片側椎弓切除術)よりも脊椎を削る範囲が狭く、さらに隣りの脊椎との連結部分を温存するため、術後の脊椎の不安定化を軽減することができ、かつ、手術侵襲からの早期回復が期待できます。

椎間板ヘルニアの突出物質の量や侵襲領域によってはヘミラミネクトミーへの変更もありえますが、ほとんどのケースで適応可能です。

また、加齢によって徐々に脊髄が圧迫されるタイプ(HansenⅡ型)でヘミラミネクトミーやミニ・ヘミラミネクトミーを選択した場合、多少の脊髄の圧迫は解除できますが、原因の圧迫物質を除去することはできないため、ミニ・ヘミラミネクトミーに椎体を削るコルペクトミーを併用した術式を選択します。

 

◎CT写真:椎間板ヘルニア症例
矢印;脊髄を圧迫している椎間板突出物質

 

 

 

 

◎CT写真:正常

 

 

 

 

 

◎手術で骨を削る範囲
赤線;ミニ・ヘミラミネクトミー
黄線;ヘミラミネクトミー(従来法)

 

 

 

 

◎術中写真
矢頭;椎間板突出物質

 

 

 

 

 

◎術後写真
術創(約3cm)

 

 

 

 

 

◎除去した椎間板突出物質

 

 

 

 

 

◎硬膜切開 水色矢印;硬膜の切開ライン、黄色丸;硬膜内に突出した椎間板突出物質

 

◎外科的手術(頚部)

頚部椎間板ヘルニアの場合、ベントラル・スロット法(頚部腹側減圧術)を選択し、椎間板突出物質を摘出します。 ベントラル・スロット法とは頚部腹側から脊椎にアプローチする方法で、椎間板突出物質を適切に除去できれば激しい痛みが消失し、劇的に症状が改善します。

         
   ◎CT写真:C3-4                                           ◎CT写真:C4-5

 

◎手術写真
ベントラル・スロット法(頚部腹側減圧術)

 

 

 

 

 

ウォブラー症候群(別名;すべり症、大型犬の頚部椎間板ヘルニア+頚椎不安定症)

大型犬で頚椎の不安定が生じ、頚部椎間板ヘルニアが生じます。
症状は四肢ともに認められますが、多くの場合、後肢の症状(歩行時の爪の引きずり、ふらつき、麻痺など)が認められ、最終的には前肢の不全麻痺、四肢での起立困難を経て、四肢完全麻痺に至ります。
治療は、ベントラルスロットによる椎間板突出物質の摘出と不安定になっている頚椎の固定が必要となります。

黄色〇;椎間板突出物質
術中写真;ベントラルスロット後にSOPプレートを設置
術後レントゲン

 

 

椎体奇形

生まれつき椎体が奇形しており、短頭種(ボストン・テリア、フレンチ・ブルドッグ、パグなど)で認められます。
無症状のことが多いため、健康診断などで偶然見つかることがあり、その場合は治療は不要です。
ただし、椎体奇形では椎体が不安定になることがあり、痛みや麻痺などの臨床症状が認められる場合は外科的治療が必要となります。
治療は脊髄を圧迫している部分(椎間板、脊椎)を除去し、ピンやスクリュー・骨セメントで椎体を固定します。

 L3の椎体奇形
 L3-4の脊髄が圧迫されている(青矢印)。

L3-4の背側椎弓切除術(ラミネクトミー)、部分椎弓切除術(ミニ・ヘミラミネクトミー)、椎体切除術(コルペクトミー)を実施し、プレートにて椎体を固定。

 

 

脊椎の骨折、脱臼

車との接触事故で生じます。症状として両後肢麻痺、排尿障害などが認められます。
治療は脊髄を圧迫している脊椎の一部を切除し(背側椎弓切除術)、骨折部を整復した後、ピンやスクリューを骨セメントを用いて固定します。
受傷して4~5日以上経過すると、骨折・脱臼した脊椎を元の状態に戻すことが非常に困難になるので、早期の手術が必要となります。

胸腰椎の脱臼

胸腰椎の脱臼、骨折

L1の圧迫骨折、T12-13、T13-L1、L1-2椎間板ヘルニア
T13-L1に突出した椎間板突出物質

SOPプレートを用いた椎体固定
T12-13、T13-L1;ヘミラミネクトミー+コルペクトミー
L1-2;ミニヘミラミネクトミー
術後レントゲン写真

腰仙椎の脱臼

 

 

脊椎腫瘍

骨でできている脊椎にできた腫瘍です。
腫瘍の発生部位によっては脊髄を圧迫し、歩行障害、後肢麻痺などを引き起こします。
脊髄の圧迫が重度であれば、腫瘍ごと脊椎の一部を切除し、プレートで補強します。

第1腰椎の軟骨肉腫